2021年3月、関市に新しい美術館が登場しました。
シンプルながら、目を惹かれる外観。
関市長を16年務められた後藤昭夫氏は、関市の前衛美術家集団「VAVA」の創立メンバーでもあり、ご自身も表現を続けてきたアーティストです。
その作品を展示するために、後藤昭夫氏のご子息が私設美術館を建立。保管している作品と、他のアーティストの作品とが混ざり合う、見ごたえある展示を会期ごとに企画されています。
このときは「刀匠・高羽弘宗と後藤昭夫」展が開催されていました。
建物の内側もおもしろい……入ってすぐに、地面が砂利。
真ん中には木箱?? 一体これはなに?
(後ほど中身を紹介します!)
壁には迫力ある大型作品。こちらも企画展ごとに入れ替わっているそうです。
「刀匠・高羽弘宗と後藤昭夫」展を堪能しました
特別な依頼から出来上がったという、一点しかない刃物たち。柄の部分がグルグル巻いている刃物も!
今年、刀匠・高羽弘宗氏が注力したという作品「蝋燭スタンド」。
飛騨市の「三嶋和ろうそく店」と出会い、「和ろうそくに合う蝋燭立てがあると嬉しい」というところから生まれたそうです。
これは、刃身が刺さっている……??
和ろうそくは一定した強い光で、煙も出ず、ゆらめきながら燃えていく姿が本当に美しいとのこと。このスタンドで眺めてみたいなぁ……。
そのほかにも、色々な作品が並んでいました。
年度ごとの刀身が並べられています。これは一体……?
「自分の感覚が研ぎ澄まされいるか、確認するための毎年の一振なんですよ」
繊細な姿勢、胸に沁みます。
そんな刀匠・高羽弘宗氏の作品と呼応するように、「刃」を想わせる後藤昭夫氏の作品が並べられていました。
「関市の日本酒「さんやほう」のラベルは後藤昭夫氏の絵」という知識はありました。
元関市長は芸術に関心のある方なんだなぁとは思っていましたが……
現代アートの表現にも繋がる前衛的な抽象絵画、多様な素材を使った作品。
完全にプロのアーティストだったのですね……!
31歳のとき、関市の前衛美術家集団「VAVA」発足に関わったという後藤昭夫氏。
1959年、西尾一三を中心として、石原ミチオ、後藤昭夫、小本章ら関市の若手アーティスト10名が集まり、地方から中央へ芸術活動を発信する集団として、関市前衛美術家集団VAVAが結成されました。VAVAは、それぞれの表現スタイルをもった個々の作家が主体となり、既成の型にとらわれず各自の意思によって自由な創作をすることを主張したグループです。
http://www.gi-co-ma.or.jp/exhibition/110805/
当時は毎年、東京で展覧会を開催、ブラジル・リオデジャネイロ等にも進出されていたそうです。
現在「VAVA」の歴史がどう連なっているのかも気になってきました。
あ! トイレの中にも、作品が!! 自分は危うく見逃しかけました。皆さんもご来場の際には注意してくださいね。
木箱の中も拝見しました
皆さんお待ちかねでしょうか。木箱、オープン!
木箱の中には、後藤昭夫氏が丁寧に保管されてきた写真集や、各地の風景を描画したスケッチブックが詰まっていました。
「父は『山』にこだわりがあったようで、描いた作品も多く残っています。いつか彼の『山』の作品集を出したいと思っています」
歴史の積み重ね、丁寧な保管に圧倒されます……
どこで何に触れてきたのか、後藤昭夫氏の視点を追体験できます。
後藤昭夫藝術館の建築は杉下均建築工房が担当
最初にも書いたとおり、建物自体が本当に、見ごたえ十分なんです。
ゆったりとした空間設計。椅子と机のスペース、企画展によってはアート作品がどんと置かれるそうです。
小さな扉を開けると、小上がりが広がります。
「ここでそろばん教室も開いています。興味ある方はお声がけくださいね」
建築を担当された杉下均建築工房のWebサイトに、後藤昭夫藝術館でのこれまでの企画展も紹介されていました。
2022年9月30日(金)~10月23日(日)「彫刻家 高田吉朗との遭遇」
2022年5月20日(金)~6月12日(日)「円空写真家 後藤英夫と後藤昭夫」
2022年3月4日(金)~3月27日(日)「師 坪内節太郎と行動美術の時代」
ほとんどの入場料が「100円」というのも驚きです。
現在(2022/12/9時点)開催中の「刀匠・高羽弘宗と後藤昭夫」展は、12月11日(日)まで。
気になる方はお見逃しなく!
生でアートに触れる至福のひととき。今後の企画展も楽しみにしています。
関連する情報
・さんやほうサポータークラブ……後藤昭夫氏の絵がラベルになっています。
・NOMAD CAFE ANONYME(アノニム)……歩いて30秒、芸術鑑賞のあとに美味しいコーヒーをどうぞ。